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このケイバ本が面白い




面白いな!とか、役に立つなとか、思った競馬本を紹介していきます。


■巨泉重賞予想本の活用法
【巨泉の重賞競走予想全書 大橋巨泉 ミデアム出版社 1992】
総ページ数2172。定価8800円の大著である。今はもう半分リタイアしてしまった大橋巨泉氏が1971年あたりから1989年(平成元年)あたりまで、18年間に渡って「競馬エイト」、「サンケイスポーツ」に連載してきた予想コラムを収録した分厚い本だ。

「ジャズ評論家、競馬評論家を経てテレビ番組司会者として人気絶頂のさなか、1990年に56歳で「セミ・リタイア」を宣言」(「Web現代」より引用)したという何とも羨ましい巨泉氏だが、その予想スタイルは「一に格、二に調子」というもの。そこで時折出てくるのが「プロの調教師が出してくる以上、八分以上の出来とみる」といったフレーズ。そこには、どうみても格上の実績馬が「七分以下の出来」だったとしか考えられないような負け方をするシーンを繰り返し見て、どうしても拭い去れなくなった関係者への猜疑心が見て取れる気がするのである。

それは今も競馬場やWINSで「チクショー、全然走んねぇじゃねえかよ〜!」と地団駄を踏む馬券オヤジたちの心の叫びと共通したものなのではないか。「絶好調だよ」との調教師のコメントを信じたオレがバカだったんだ…ってなわけだ。などと書いていると、いかにも自分は傍観者で、そんなもんには引っ掛かってないもんね〜と聞こえるかもしれないが、そんなことはまったくない。紛れもなく、この私もそんな馬券オヤジの一人である(いや、「オヤジ」というにはちょっと若いつもりだが…)。

で、結局私は何が言いたいのか。この大著には単なる予想に止まらず、競馬会に対する意見・注文などもしばしば書かれており、なかなか興味深いものなのだが、大変申し訳ないことに競馬番組表派にとっては巨泉氏の予想は興味の中心にはないのである。番組表派の人にこの本をお薦めするのは、過去の重賞の馬柱がたくさん、たくさん載っているからなのだ。

本書は巨泉氏の予想・馬柱・レース結果の三つの要素で構成されている。これが全49の重賞について約18年分も収録されているのである。収録された重賞は関東のものが中心だが、G1級のレース等については関西のものも載っている。これだけの分量のものがまとめて載っていて、8800円ならお買い得とも言えよう。

10年以上前の馬柱なんか必要ないよという声もあるだろう。それは9割5分正しいと思うが、何かの時に大昔の馬柱を見たくなる時もあるはず。この本自体が発行から10年近くたってしまっているので、今や書店の店頭ではあまり見かけなくなったが、まだ絶版にはなっていないようだ。番組表派ならゲットしておいて損はない1冊だと思う。

などと書いているうちに、巨泉氏に民主党から参院の比例代表選に出馬要請があったようだ(たとえば、この記事)。(元)競馬評論家がついに自ら「出馬」かぁ〜…もし、出馬が確定したら、やっぱり「八分以上の出来」と考えていいんだろうな〜(といっても比例代表なのだが)。(H13.6.12)



■天下の一橋大教授も形無し! 競馬番組表理論の基本書
【恐るべき競馬の本 片岡勁太 KKベストセラーズ 1990】
片岡勁太氏の処女作。この本をきっかけに競馬番組表への注目がガゼン高まった。「戦歴の読み方」とか「同枠馬双生児説」とか、「別定戦、ハンデ戦の考え方」など番組表理論の基礎とも言うべきことが色々書かれている。番組表を研究している人にとっては今では当然のような気のすることだが、類書などなきに等しい10年前にはまさしく画期的な競馬本だった。

なにせ10年前の本、書かれていることが、すべて今の競馬にそのまま当てはまるかというと疑問。けれど、男のロマン?みたいなものを感じさせる部分があったり、あまりに痛烈な皮肉があったり、文章自体の面白さは天下一品だ。一読の価値は十分ある! というより、二読、三読、四読してみたい。片岡氏の著書の中でもたぶん一番ジックリ時間をかけて書かれたものではないだろうか。

では、私の大好きな「痛烈な皮肉」の部分をちょいと引用してみよう(同書P94〜95)。


 一橋大学教授長島信広氏は競馬に一家言をもった人物で、大レースのおりマスコミに登場して傾ける彼の蘊蓄にはファンも多いという。そんな彼のとっておきの馬券術は”定置網方式”と呼ぶものだそうだ。
 その方法は、自分なりに選び出す人気薄馬から、馬券になりやすい枠に向けて買い目を組み立てるというもので、約三〇年に及ぶキャリアからおよそ三〇〇万円の収益を上げたとか。
 それだけを聞けば、方法論として特別目新しいものではない。煙草屋のお婆ちゃんも八百屋のアンチャンも、誰だって人は似たようなシステムを考えて馬券に参加するのだ。天下の大学教授ならでは、という独創的フォーメーションとは言い難い。ただしミソは軸となる穴馬の選択手段で、そこがいわば”長島流定置網馬券術”の真髄ということなのだ。しかしその真髄に迫って、読者も三〇年後のプラス三〇〇万を目指す馬券術に挑戦するだろうか。一か月、いやたった一日で三〇〇万を失う男たちが珍しくない競馬場で、彼のストイシズムに満ちた遠大な勝利は、とうてい凡人の及ぶ所ではない。彼の場合たぶんシステムではなく、精神力で卓越したのだろう。凡百のファンとしては、せめて「定置網」のスタイルだけでも拝借して彼の偉業を見倣ってみようではないか。


いや〜、相当な皮肉ですね〜。天下の一橋大教授も形無しといったところ。なにしろ、「ストイシズムに満ちた遠大な勝利」ですからね〜。

この『恐るべき競馬の本』で一つ気になるのは裏表紙の著者プロフィールにある「今まで通算2万時間、約2億円の投資」という言葉。その〜、なんというか、馬券をたくさん買ってきた(儲けてきた?)ということの表現なら、かなり変わった書き方だ。ある意味、誠実な感じもするね。「2億円の儲け」じゃなくて、「2億円の投資」だからね。でも、通算2万時間って一体どうやって計ったんだろう?

ちなみに1999年にメタモル出版から出た『JRAから自由にお金を引き出す恐るべき競馬の本』はこの本の再刊ではなく、まったく違う内容の本です(これも随分スゴいタイトルだが…)。 (H12.10.31)
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